『写真芸術』 (1921)


写真史研究者、特に「芸術写真」の分野に関心のある者にとって価値ある雑誌『写真芸術』の創刊号。
某所で5,000円ほどで入手。


 『写真芸術』(月刊、発行期間:1921.6〜1923.9)
   1921(大正10)年6月1日発行、60銭
   編輯発行兼印刷人 安成三郎   (東京市京橋区南金六町15番地)
   印刷所      博文館印刷所 (東京市小石川区久堅町108番地)
   発行所      東新商店出版部(東京市京橋区南金六町15番地)


福原信三の写真「巴里とセイン其一」や、大田黒元雄の「写真小論」など、この時期のアマチュア写真の世界を語るうえで欠かせない数々の記事が掲載されています。


編集の安成三郎(1889(明治22)〜1957(昭和32)年)は秋田出身の柳田国男(郷土会)門下で、福原信三の個人秘書を長年務めた人物。「福原信三の手」とも言われるほど密接な関係だったようです。
発行所になっている東新(東神)商店は写真材料商であり、ここに置かれた写真芸術社(1921〜1926年)が発行の中心となりました。本誌巻末にも広告が掲載されています。
(写真芸術社については、松濤美術館学芸員の光田由里さんが書かれた『写真、「芸術」との界面に』(青弓社、2006)などが面白いです)


安成三郎については、東京・青山にあるギャラリー「ときの忘れもの」の綿貫不二夫さんのホームページに掲載されているエッセイ、「安成三兄弟」(1995.3)に詳しいです。
http://www.tokinowasuremono.com/essayg/yasunari.html

このエッセイにも記されているように、秋田・大館の郷土史家である伊多波英夫さんが安成三郎について詳細な調査を行っており、40年にわたる研究の成果を大著にまとめられています。

伊多波英夫『安成貞雄を祖先とす〜ドキュメント・安成家の兄妹』無明舎出版、2005、3,780円。
(ISBN 4-89544-406-6)
http://www.mumyosha.co.jp/docs/05new/yasunari.html


また、興味深い資料として、以下のサイトには安成三郎の名刺が掲載されています。
書き込みの通りなら、1955(昭和30)年当時のもの。
http://kikoubon.com/yasusabumei.html
晩年、彼は「結城素明芸文家史蹟研究所」を名乗っていたのでしょうか。


【参考リンク】

資生堂 http://www.shiseido.co.jp/
■福原信三・路草写真展(資生堂
     http://www.shiseido.co.jp/s9704sin/html/
■神保町系オタオタ日記
     http://d.hatena.ne.jp/jyunku/20060411